「八甲田山死の彷徨」と大阪万博
なぜ開幕早々、大阪万博はトラブルが続くのか。一つの理由は、万博を進める大阪の首長は弁護士出身。弁護士は物事を作り出す、新しいことを作り上げていく経験に乏しい。どちらかと言えば、相手に反論し、打ち壊していくのが仕事である。前の首長も同じ弁護士で、目標、相手を打ち壊すことに長ける。反面、物事を生み出すことに経験が乏しく弱いだろう。
口だけは達者だが。それを自身で理解したのか政党を立ち上げたものの、だから途中で投げ出したのか。自ら限界を知り退いたのか。前の首長も今の首長も何か問題をつかれると反発、反論で押しまくる。指摘された問題を冷静に分析し、現状を認識して改革、改善をするより、屁理屈をこねて打ち負かすことに終始しているようにも見える。その影響を受けてか、子分の大阪市長のボクも批判に対し、聞く必要はないと言う。
そんな状況だからプロジェクトを進める計画、段取り、実施、対策という基本行動が疎かになる。そんな首長の性格、経験が大阪万博推進に影響を与えているように見える。
どんどん膨らんだ予算はその象徴。万博開幕日にすら、数カ国の建物が完成せず閉鎖されたまま。民間では考えられないこと。店をオープンさせ、お客さんを入れながらテーブルの向こうで工事が続いているのと同じ。
前の首長は“サクラダファミリー”も同じで(問題は無い)と嘯いたようだが、まさに壊し屋、もの事を作り出す人間の言ではない。
休日は、万博はあちらで待たされ、こちらで待たされ、広い会場、看板もなく、どこに何があるかわからない。万博に行った知人は、パビリオンの場所を聞いても場内整理の関係者すら“わからない”の返事だったという。わからなくても関係者なら地図を持ち、探して教えるのが常識だろう。その常識さえも学習せず、開業してしまったようだ。
会場に入った来場客は右往左往の彷徨。そうだこの万博は日ごろ運動不足の人のために、とにかく歩き回れ、気の短い人には、じっと我慢で待つことに慣れ忍耐を学べ。そこまで気をつかってくれている万博だった。そう思うしかない。
大阪万博で男女共用のオールジェンダートイレが18か所あるそう。いったい何を考えてセクハラ天国の日本でそんなトイレを高いお金をかけて作ったのだろう。それを考えた連中は何か特別な目当て、魂胆があったのか?
半年後に壊す、驚くような高額の、しかしトイレとしての機能不十分のトイレ。何も考えず、金さえだせばいいものができる。もの事を進める経験に乏しい人間が進めたことの典型。その問題を問われても、大阪の首長のボクは問題を真摯に受け止めることはせず、屁理屈をこねて反論する。とにかく何もかも想定外、常識外、驚きの連続の万博がスタートした。
そらそうなるのも当然。大阪の知事は、万博の運営は皆が初めての体験なので(問題も起きる)と発言していたので、問題が起きても初めての体験で、全てが予想外、想定外になる。何が起ころうが、皆で渡れば怖くないが大阪万博か。
平時でもいろいろ問題が出ている。しかしそれはしばらく凌げば解決する。恐ろしいのは大きな地震や火災。狭く外界と閉ざされた会場で群衆パニックが起きればどうしようもない。平時の対応で問題が起きているということは、災害時には、その対応や訓練が伴っていないことが予想される。だから子供たち、修学旅行などで万博に行く生徒には恐ろしさがある。通期パスを買い会場に行く人の危険への遭遇確率は高くなる、特に注意か。
大阪万博で思い出すのは実話をもとにした新田次郎の小説、「八甲田山死の彷徨」。挑んだ二つの隊のうち一方は、装備に大きなお金をかけて多数で真冬の雪山に挑んだが、人心が読めず、雪中彷徨し遭難、死の雪中行軍となった。
大阪万博も大金をかけて挑んだが、人をコントロールできず現場が混乱。死の雪中行軍に向かい進みだしたように見える。
皆が初めての体験なら十分いろんなことを想定して対応の準備をする。普通の企業ならそうだ。そんな準備すらやらなかったのだろうか。収益事業でなく税金を使った事業だそうなので、そこまで身につまされて考える必要もないのだろう。
この万博は現場を知らず、人を知らない人間が机上での頭と金だけで考えたプロジェクトなのか。その結果がどんな状況になるのか、「八甲田山死の彷徨」をモデルに読める。この大阪万博は企業経営の勉強会で「失敗の本質に学ぶ」に使えることになるかもしれない。
万博誘致を進めた前の大阪の首長は、これだけの規模の万博の運営はたいへんと自ら擁護の発言をしているが、たいへんなのは当たり前。それを承知で誘致したのだろう。だからこそ十分な準備をする。これが己の金を使いやっているなら、“ほんと大変”など悠長なことは言えない。ほんと気楽。
管理能力が備わっていなければ、能力にふさわしい範囲のプロジェクトしか進められない。“だれも経験していない、これだけの規模の万博はたいへん”と言うなら、己の管理能力を自ら問わねばならない。それをせず、大きなプロジェクトに挑むのは、己の力も知らず、無謀な山や海に挑戦し、あとからSOSで助けてくれと言うのと同じ。
しかし民間と違いSOSを出せば、またまた税金投入で助けてもらえる。羨ましい。
万博会場の隣で博打場の建設が始まったそう。修学旅行で万博に来た子供たちから、あれは何?と聞かれたら、大阪経済の成長と未来のための博打場建設と答えるのかな。
さらに維新のどうしようもないアホ議員は中国への修学旅行に反対している。地震での危険の確率が高い万博修学旅行を勧めながら、中国への旅行に反対する右翼バカ議員。
日本経済と東南海地震はよく似ている。何十年内に激震が来ると思っていても、はっきりした期日が決まっていない。そのため国民の意識も来るか、来ないかわからないになる。
国家破綻もいつくるかわからないので、今のうちに借金は増やせるだけ増やせばいい。バラまきと言われようが、選挙対策と言われようが、何十年先の破綻なんて誰も考えていない。
とにかく今を乗り切ること。今の自分の立場を守ること。どうせ激震が起これば、皆が吹っ飛ぶだけ。皆で渡れば怖くない。
どうせそうなら、国民一人5万円給付とかケチなことは言わず一桁上げて50万円を給付すればどうだ。
どかんと爆弾を投げて、その爆発音に驚かせる。ひるんだ相手に要求をつきつける。少しは妥協をちらつかせながら自分の思うように持っていく。昔の単純な傲慢経営者の手法そのものでトランプは政治をしている。
川崎重工が裏金を使い自衛隊潜水艦乗組員の酒食接待を長年していた。自衛隊関係者の処分は伝わらないが、自衛隊には自分たちの酒食代は当然、業者側が持つ、の習慣があったに違いない。ごっつぁんでの体質が自衛隊にしみついていたのだろう。潜水艦を建造するもう一方の三菱重工はどうなのかな。一方だけが接待を続けていたなら、“あちらさん”は全額負担しているが、の脅しもあったかもしれないが。